「レコードコレクターズ」と「ミュージックライフ」、硬派と軟派の両極(ちなみにわたしは中間の「クロスビート」が好きだった)。
「ミュージックライフ」は過去のインタビュー記事や実際に取材した人の証言をもとに構成されており、当時の編集長が女性だったこともあり、オリジナルのグラビア多め(ブライアンの超絶カッコいい写真にニヤける)。音楽だけでなくメンバーのパーソナリティにも触れる内容で、遠い異国のアーティストを身近に感じることができる貴重な雑誌だったことが伺える。
一方「レコードコレクターズ」のほうは表紙を見ても分かるけど(もっといい写真あるだろうに)グラビア的なものには一切こだわらず、文字が多い。“レコード”の“コレクター”向けだから仕方ないか。本人たちのインタビューなどはなく、ライターは男性ばかりで、個人の思い入れが強いように感じた。
そのなかで、立川芳雄というライターが書いたちょっと見逃せない表記があった。
「女子供」のためのロックは、聴き手の心を昂揚させてくれるが、聴き終わった後にはとくに何も残らない。そんなカラリとしたあっけなさが、クイーンの音楽の魅力なのだ。一体何を言っているのか。
こういう文章を校閲しないで本にするとは驚きだ。
発行が2005年なので今ほどセクハラ、パワハラが問題にならなかった時代だったかもしれないけれど、それにしてもこの偏見はひどい。偏見どころか、クイーンの音楽の魅力が「聴き終わった後にはとくに何も残らないカラリとしたあっけなさ」と断言するなんて、どうかしている。こういう人が音楽でメシを食ってるかと思うとゾッとする。
昔から男は言いたがる。「女子供にロックの何がわかる」と。
でもそれは好みの問題であり、男女の違いでもある。
このライターはプログレが専門のようだが、男性がプログレを好きなのは、男性が好きな“機材”とか“テクニック”の欲を満たしてくれているからだと思うのだ。わたしはどうしてもあの仰々しい音楽が好きになれない(メンバーが超絶ハンサムだったとしても…)。これだって好みの問題だし、それを理由に「音楽を分かってない」と言われる筋合いはない。
それに「女子供向け」といわれるロックを作っている本人は、れっきとした男性ではないか。
たしかに女性はミーハーだ。心変わりもしやすい。それは女性の方が音楽だけでない幅広い「ワクワク」を求め、それを見出すのが得意だからではないだろうか。
「ミュージックライフ」は、かの『オペラ座の夜』をレコーディングしていたリッジファームスタジオまで取材に出かけておきながら、音楽的な取材はほとんど行っておらず、「何やってんの…」という気持ちもないではないが、レコーディングの合間のリラックスした様子を書いた記事は今では貴重な資料だし、思い入れや知識だけのレビューよりもずっと臨場感や説得力がある。
『ミュージック・ライフ』元編集長 東郷かおる子さんのインタビューで笑ってしまったのがこの言葉。
(クイーンには)結婚してるんですか? 体重は何キロなんですか? 好きな色は何ですか? っていう質問が死ぬほど来るわけですよ。そういうことはレッド・ツェッペリンとかYesとかピンク・フロイドにはないんだから。だってピンク・フロイドに初恋はいつですか? なんて質問をする発想なんてないじゃないですか(笑)そうそう、そうなのよ。クイーンには「この人のことが知りたい!」と思わせる“何か”があるのよ。しかもメンバー全員に!
たくさんの人たちが今こうしてクイーンに夢中になっているのも、“他のバンドにはない何か”を感じたからなのだ。
にわかにクイーンに目覚めた私に、
「今ごろになって聞いてるんだ?」
と(ちょっと小馬鹿にした口調で)言ってきた人がいた。そういえばこの人、昔から上から目線だったなあ。こういう人は
「あはは〜、すごいねー!なんでも知ってるんだね!偉いね〜!」
って褒め殺すしかない(笑)。
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