2009/06/30

父の命日に寄せて

ここに1枚の古い写真がある。
ちいさな男の子が母親に手を引かれて新橋の町を歩いている写真である。
帽子をかぶり、丸い襟にポンポンがついたカーディガン、半ズボンをはいた可愛らしい男の子が、モダンな縞の着物を着たお母さんに手を引かれて歩いている。
その後ろには半纏を着た職人さんや、学制帽をかぶった書生さんの姿。
昭和10年代を思うと、その子がいかにオシャレで裕福な家庭に育ったのかが分かる。

男の子は、その後小学校1年生の時に母を亡くした。
遠足から帰って来たら、母の死を知らされたそうだ。
実は前日の夜にすでに亡くなっていたのだが
楽しみにしている遠足を休ませたくなかった祖父母の配慮により、男の子には知らされなかった。

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ここに1枚の古い写真がある。
メガネをかけた若々しい青年が
まんまるな顔にりんごのようなほっぺの女の子を
おぶり紐で背中にしばって自転車に乗っている写真である。
その青年も女の子も満面の笑顔に満ちていて、幸せそのものだ。
背中におぶった女の子のことが可愛くて仕方がない様子が伝わって来る。

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ここに1枚の未来の写真がある。
父を亡くしてメソメソしているりんごのほっぺの女の子が
希望に満ちあふれた人生を謳歌している写真である。
父もきっとそれを望んでいるはずなのだ。
がんばれ、りんごのほっぺの女の子よ。

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