2009/09/09

顔見知りの他人

通勤路で毎朝すれ違う人がいる。
歳の頃は私と同じくらいの男性で、ハンチングにサングラス、
アロハやベルボトムをさらりと着こなすその姿からは
クレイジーケンバンド的なちょいワルにいさんを彷彿させる。
見た目はカタギっぽくないのだが
毎朝同じ時間に同じ場所ですれ違うということは
毎日きちんと働いていらっしゃるのだろう。

あまりにも時間が正確なので、いつもより早く会うと
「あ、今日はちょっと遅刻ぎみだな」
と時計がわりにしているほど。
逆に、私が遅れた電車に乗ってきた日などは
「今日は電車が遅れてますよ」
と教えてあげたくなる。
でも、あくまでも毎日すれ違うだけの他人。
一度挨拶を交わしたら毎朝会釈ぐらいしないといけなくなるし
ずっと続けるのも面倒なので、そのまま素通りしている。

今日も遅い時間まで仕事をし、社を出ていつもの交差点を渡ろうとしたら
前から見覚えのあるハンチングが!
うわー、朝も会ったのに夜にも会うなんて!しかもこんな時間に!
「あなたもお忙しい仕事なのですか?」
と聞きたい気持ちをグッとこらえ、いつものように他人の顔で通り過ぎる。

不思議な不思議な、顔見知り。

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