2010/12/03

黄金サンクチュアリ

急ぎの仕事が立て込み3時までぶっ通しで働いたあと
ついに電池切れでお昼の休憩をとりに外へ出た。
天気もいいしあったかいし
お弁当とスープを持って
人知れず会社の裏にある場所へ行ってみた。

ここを見つけたのは
夏に来てすぐ異動してしまった新人くんだ。
私有地の一部がオープンスペースになっていて
誰でも休憩することができる。
木立の間に椅子とテーブルがあり
鳥の声を聞きながら静かに過ごすことができる。
お昼にぶらぶらしている私でさえ見つけられなかった
まさに隠れ家のような場所。

私もここの居心地がよくて気に入ったけど
彼が見つけた聖域を侵さないように
不在の日を見計らってこっそり訪れていた。
異動になってからは独り占めできたはずなのに
なぜだか来られなかった。
かつてそこの主だった人のことを思い出してしまうから。

久しぶりに訪れたサンクチュアリは
いちょうの葉が輝く黄金色に染まっていた!
嵐の後の青空との対比があまりに眩しくて
目がくらみそうなほど。
まわりに人はおらず
ただただいちょうの木が風にざわめく音だけが渦巻いている。
そこにはもう切なさも哀しさもなく
清々しい空気だけが私を包み込んでいた。

季節が変われば景色も変わる。
時が流れれば人も変わる。
またすぐに会えると思っていた彼も
あと数日で社を去ることになった。
彼と最後にごはんを食べた定食屋さんも今はもうない。
たった半年以内のことなのに。

お弁当箱の中に落ちてきたいちょうの葉が
別れの手紙のように思えた。
譲り受けた聖域はこれからも誰にも教えないでおく。

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