ついにこの日がやってきた。
キリンジの弟がバンドから独立する最後のライヴの1日前。
思えば私が経験した解散あるいは脱退を前提としたライヴは
YMOの散開コンサートと今回のキリンジのライヴだけ。
どちらも自分の中でとてもとてもとても大切なバンド。
だからこそこの喪失感は簡単にぬぐい去れるものではない。
こうなったらもう、ライヴに行かなければ「なかったこと」にならないかと思ったけど、己を奮い立たせて会場へと向かった。
有終の美を確認すべく。
早めに行ってグッズでも見ようと思ったら、グッズ売り場は長蛇の列!長蛇と言ってもフツーの長蛇じゃないよ。たぶん2〜300人は並んでたね。
このまま並び続けてライヴの出だしを見逃すのも悔しいので、グッズはあきらめてベルギーワッフルで小腹を満たしながら席で開演を待つことに。
ステージには白いスクリーンがひかれて、SEとともにライトが当たってワクワク感増大!
SEは新譜『Ten』収録のインスト「dusty spring field」。'60年代英国の女性シンガーと同じ名前だが、springとfieldにスペースがあるので、彼女の名前を掛けて「ホコリっぽい春の野原」っていう意味にしたのかな?と新譜発売時に花粉症の鼻をグズグズさせながら勝手に思っていた。
どこか懐かしく愛おしいこの曲を聴いただけで早くも涙が…。まだ早いよオレ!(笑)
メンバーがシルエットで映し出され、最初に始まったイントロは「グッデイ・グッバイ」!わーい!!と立ち上がったら、あらら?2階席はほとんど着席状態のオトナゾーン。ですよね。せっかくのホールなんだからオトナはゆっくり座って楽しみたいですよね。…ってことで3曲目ぐらいからは座って観賞した。
新譜が出てセットリストが変わるのかな?と思ってたけど、
広島で観た時とほとんど同じ。
座ってじっくり観たおかげで、バンドの演奏力の高さや、ヤスのシルキィヴォイスを存分に堪能できた。いつもはデカイ人に目がいきがちの私だが、今回はとにかくもうヤスの声を耳に閉じ込めることだけを考えていた。
ふと見るとヤスのそばに加湿器のスチームがガンガン吹き出していた。今まで何度もキリンジのライヴを観てきたけど、加湿器が登場したのはあまり記憶にない。のどの調子が悪かったのかもしれないけど、私には最後まで美しく声が届いていたよ。
兄樹は白いシャツに丈が短めのモスグリーンのジャケットにブラウンのパンツ、ヤスはピンクのシャツに水色のカーディガン(最近カーディガンをよく着てるなあ)、黒のスリムなパンツといったいでたち(遠かったのでディテールは不明)。2階席の真ん中あたりだったので全体がよく見れたのと、ライヴハウスでは見えないヤスの足でとるリズムが見れたのが良かった。
NHKホールということもあってライティングが美しかったのも印象的。ステージにセットされた、バーが連なってスクリーンになったような照明がすごく良かった。
時に幻想的に、時に激しく色が移り変わり、また複数のスクリーンが一枚のモニターになって映像が映し出されたりと、ユニークなライティングがキリンジの演奏に花を添えていた。
2001年リリースのアルバム『fine』から聴き始めたから、かれこれ12年間聴き続けていることになる。
その間いろんなことがあって、アルバムごとに当時の出来事が脳裏をよぎる。
環七をバス通勤しながら聴いていた『fine』。
新しい引越し先で聴いた『For Beautiful Human Life』。
求職中にいろいろと励まされた『DODECAGON』…。
彼らの音楽は常に生活の中にあった。
なんていうかこれはもう、親戚みたいなものなのだ。
「竜の子」で泣いた。
ずっと“万年予備校生”みたいだと思っていた“いとこ”が
たくましく成長した姿を見て泣いた。
私だけじゃなく、きっとここにいたみんなが
同じ気持ちで見守っていたのではないかと思う。
アンコールの「Drifter」では泣く気マンマンだったのに
2番の出だしの歌詞(すごく大事なとこ!)を間違ってしまい
涙よりも汗が出た。
ほらね、こういうところがあるから
どうしても放っておけないんだよね(笑)。
ラストはストーカーの曲で盛り上がったあと
もしや?と思ったら2度目のアンコール!超うれしい!!
「みんなが大好きな人気の曲」といって『悪玉』を演奏。
うんうん、大好きだ。大好きに決まってる。
それまで座ってたとなりのお兄ちゃんも
大声で「マイクよこせ早く!」と一緒に歌ってた。
ずっと脱退の件には深い言及をしてこなかった彼らだが
最後には
ヤス「これからのキリンジもよろしく」
兄「泰行も頑張ってね」
ヤス「良かったら僕の音楽も聴いてください」
みたいなやりとりがあり、我らキリンジ家の親戚一同は微笑したことと思う。
ライヴスタートが6時半、終了はなんと10時!サービスたっぷりの3時間半の長丁場。
開演前につまんだベルギーワッフルが大正解だった。
帰りはキリンジゆかりのカフェ、
江古田の「プアハウス」で激辛カレーを食べようと思ってたけど、多分間に合わなさそうなので後日伺うことにした。
終演後に並んで買ったパンフレットが結構良かったなあ。
これもまたあらためて書きますね。
4月11日 セットリスト
01.グッデイ・グッバイ
02.双子座グラフィティ
03.風を撃て
04.野良の虹
05.ダンボールの宮殿
06.僕の心のありったけ
07.愛のCoda
08.タンデム・ラナウェイ
09.エイリアンズ
10.小さなおとなたち
11.さよならデイジーチェイン
12.ホライゾン!ホライゾン!
13.夢見て眠りよ
14.ナイーヴな人々
15.ムラサキ☆サンセット
16.YOU AND ME
17.MUSIC!!!!!!
18.都市鉱山
19.chant!!!!!
20.アルカディア
21.祈れ呪うな
22.早春
23.夏の光
24.TREKKING SONG
25.竜の子
26.ブルーバード
<アンコール1>
27.Drifter
28.千年紀末に降る雪は
29.スウィートソウル
30.茜色したあの空は
31.もしもの時は
<アンコール2>
32.悪玉