2010/10/17

雑音と快音

我がマンションの前には運動場があり
土日には野球やサッカーの練習が行われる。
子供たちのかけ声などはそれほど気にならないのだが
野球のコーチの声がやかましくてやかましくて、とにかく耐えられない。
心安らかに休みたい土日の午前にコーチの怒鳴り声で起こされることが多々あり
晴れの日よりもむしろ練習が休みになる雨を心待ちにしてしまう。

以前、目の前にガソリンスタンドがある家に住んだことがあり
休みの日はひっきりなしに従業員が大声で車を誘導したり見送ったりするので
心底イライラしてクレームをつけようと思ったことがある。
おそらく、大人が終止怒鳴っている状況が耐えられないのだ。

一方、最近我が家で聞こえるもうひとつの音がある。
ずっと空き家だった上階に人が入り
乳幼児と思われるお子さんが走り回る音がするようになった。
コーチの怒鳴り声よりイライラすると思うかもしれないが
これが意外に苦にならないどころか、逆に快い音に聞こえるのだ。
数年前、ウチの甥っ子がまだ小さかった時
今とは別の家だった我が家に遊びに来るたび、よくペタペタ走り回っていた。
何が楽しいのか、ほんとにペタペタ走り回るので
「ペタペタ王子」という名前をつけたぐらいだ。
上階でペタペタ走り回る音がするたびに
甥っ子が走っている姿が目に浮かび、可愛かった当時のことを思い出す。

前の家で、私は近所の児童が外で奇声を発しながら遊んでいるのが耐えられず
「なんとかできないものか」と両親に話した所
両親は小学校の教員をしていたので子供の奇声などには違和感がなく、
むしろ教師時代の懐かしい音だから気にならないと言われて驚いた。

そういわれて思い出したことがある。
数年前に勤めていた出版社でのこと。
そこではいつもどこからかガットギターを爪弾く音がしていた。
普通の会社で生ギターの音がするなんてあり得ないのだが
音楽関連の出版社だったので、私はごく当たり前に聞き入れていた。
この妙な懐かしさはなぜ?と振り返ると
その前に長く勤めていた会社も音楽関連の出版社で
お昼休みに誰かが必ずぼろろんとガットギターを弾いており
それが日常の音で、快く思っていたのだ。

こうして、ヒトの許せる音と許せない音というのは
音を出す原因の本意とは裏腹に
受け手の思い出ひとつで
受け入れられなかったり受け入れられたりするものなのである。

ちなみに会社で「こいつらデキてる」と思える同僚男女が
他の人には聞こえないような声で会話してるのを目撃するときには
「音は出てないのに気になる」状況が生まれる例外であることも述べておこう。

0 件のコメント:

rakuten