2008/09/23

お彼岸に寄せて

最近、毎朝見ていた(というか時計がわりにつけていた)NHKの連ドラが今週で最終回を迎えることになった。
今は亡き父が毎日楽しみに見ていたこともあり、続きが気になるのではないかと思い、最終週ぐらい父の代わりに見てあげようと思ったのだが、今日は主人公の祖父が神輿を担ぐ晴れ姿を、亡くなった祖母の遺影を掲げて見せるというシーンがあり、思わず泣いてしまった。

今日はお彼岸なので、ちょっとおセンチなことを書きます。

小学校低学年の頃、私は北海道の山の中に住んでいた。
友達の家に遊びに行くのも、長い距離を歩いて行かなくてはならず、子供の足ではそれがよけい遠くに感じた。

あれはたしか秋のことだったと思う。
友人のうちに遊びに行った帰り道、いつもの一本道をてくてくと歩くが、歩いても歩いても自分の家に辿り着かない。 おかしいな?と思っていると、途中で同級生のお母さんに会った。
「あれ?あなたのおうちは逆方向でないの?」
そこで初めて反対に歩いていたことに気がついた。 延々緑が続くだけの田舎の一本道。風景が変わらないので逆に歩いても気付かなかったのだ。

来た道を引きかえすも、どんどん夕暮れが続いてくる。
どんどん暗くなってる。不安になってくる。
ふと前を見ると、子供を肩車した怪しげなおじさんが目に入った。
道に伸びる長い影。
肩車をしているので、余計長く大きく見えた。
人さらいかもしれない。どうしよう。抜かそうか、抜かすまいか…
葛藤した挙げ句、思いきって抜かすことにした。
怖いのでわき目もふらずに追い抜かすと、後ろから声をかけられた。
それは私の名前だった。

私が抜かしたおじさんは、妹を肩車した父だった。
帰りが遅いので、心配して迎えに来てくれたのだ。
なんだかすっごく気が抜けるとともに、すっごく安心した。

厳格な父と一緒に遊んだ思い出はあまりないが、これが私が覚えている父とのもっとも印象的な出来事である。
生きていた時には気付かなかったが、父には、父からしか与えることのできない安心感があった。
目には見えない確固とした愛に包まれながら毎日を平穏に過ごせた私は幸せだったと思う。

私が生まれたときはすごく嬉しくて、早く家に帰りたかったと話してくれた。
「私が生まれた時、どんな気持ちだった?」
亡くなる前に聞きたかったけど、泣きそうになるのでどうしても聞けなかった。

私が迷子になっても迎えに来てくれる人はもう居ないのだから
迷子にならないように気をつけなくちゃ。

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